SDGs時代の化粧品OEMとパッケージ戦略
環境に配慮した原料調達や再生パッケージなど、SDGs時代の化粧品OEMが取り組むべき新基準を専門家が解説します。
「エコ素材を使えばサステナブル」──そんな誤解がまだ多いのが化粧品業界です。
実際には、原料のトレーサビリティ(追跡性)や容器の再利用設計など、サプライチェーン全体の責任が問われています。
本記事では、OEM開発の現場で進む「持続可能なものづくり」の実例と、ブランドがいま取るべきアクションを解説します。
SDGsの潮流は、単なる流行ではなく“信頼の設計思想”です。
この記事でわかること
・サステナブル対応の化粧品OEMに求められる考え方
・原料調達と製造工程での環境配慮のポイント
・ブランド価値を高めるパッケージ戦略の実践例
この記事のポイント
1.SDGs対応はコストではなくブランド投資
2.原料とパッケージの両輪で差がつく時代
3.OEM選定時は「透明性」と「提案力」で判断
SDGs対応が「ブランド価値」になる理由
消費者の購買動機は“機能”から“信頼”へと移行しています。
国内OEMメーカーでも、再生プラスチック容器や植物由来インキの採用などが急速に進行中。
あるOEM工場では、製造工程で発生する廃熱を再利用し、CO₂排出を20%削減した例もあります。
こうした取り組みは単に環境配慮というより、「誠実なブランド姿勢」として評価されています。
とはいえ、すべてを一気に変える必要はありません。
“できる範囲から始める”ことが、SDGsの本質です。
原料調達の新基準―トレーサビリティが信頼を生む
サステナブル原料とは「再生可能資源であること」だけでなく、調達過程が透明であることが重要です。
たとえば、フェアトレード認証の植物オイルを扱うOEMでは、仕入れ先農園まで遡れる体制を構築しています。
これにより、労働環境や地域貢献を含めた「社会的責任」を明確にできるのです。
取材時、ある開発担当者はこう話していました。
「SDGs対応は“いいこと”ではなく、“信頼の土台”です。いまや環境方針のないOEMは選ばれません。」
そんなあなたにこそ、OEM選定時には「原料調達方針」を質問してみてほしいのです。
それが、長く支持されるブランドをつくる第一歩になります。
サステナブルパッケージで差をつける
化粧品容器は“顔”です。
環境対応型の素材として注目されているのが、再生PET、バイオPE、ガラスリサイクル素材など。
実際にOEM開発では、二次包装(箱・シュリンク)を廃止し、紙緩衝材へ切り替えるブランドも増えています。
ある事例では、再生PETボトルを採用した結果、製品コンセプトとの親和性が高まり、SNSでのポジティブ投稿が増加しました。
つまり、サステナブル対応は“顧客体験の物語化”にも繋がるのです。
とはいえ、コスト増を懸念する声も少なくありません。
しかし、長期的にはブランドロイヤルティ向上という“見えないリターン”が生まれます。
OEM企業が提案できるSDGs支援とは
OEM企業の役割は、もはや「作る」だけではありません。
製品設計から包装・物流まで、SDGsを見据えた一貫提案ができるかが問われています。
たとえば、あるOEMではクライアントブランドの理念に合わせ、原料の再生比率・生分解性を数値化して共有。
開発段階から「環境影響を見える化」する仕組みを導入しています。
その結果、ブランド側のエシカル訴求が具体的になり、販促企画でも差別化を実現しました。
OEM選定時には、「環境配慮を提案してくれるか」という視点を持つことが成功の鍵です。
持続可能なブランドを育てるための3つの視点
1.原料の出どころを知ること
サプライヤーの透明性がブランドの信頼性を決める。
2.素材と体験を一致させること
容器や包装もブランドストーリーの一部。
3.一歩ずつ継続すること
“完璧”を目指さず、改善を積み重ねる姿勢こそSDGs。
開発担当者の言葉を借りれば、「誠実さを可視化するのがサステナブル」です。
OEM企業と二人三脚で、その理念を“形”にしていきましょう。
まとめ
SDGs対応は、トレンドではなく信頼の指標です。
環境配慮=ブランド哲学を伝える手段であり、原料からパッケージまで一貫した姿勢がファンを生みます。
小さな一歩から始めても、誠実なOEMとの協働があれば必ず形になります。
まずは現状を見直し、未来志向の製品設計へと進みましょう。
【FAQ1】
Q:SDGs対応にコストがかかるのでは?
A:一部の素材は高価ですが、長期的にはブランド信頼とリピート率の向上で回収できます。段階的導入が現実的です。
【FAQ2】
Q:小ロットでもサステナブル容器を使えますか?
A:近年は小ロット対応の再生素材供給も増加。OEM側のネットワーク次第で実現可能です。
【著者】
佐々木千草
【著者プロフィール】
職種:化粧品企画開発
経験年数:7年
化粧品業界にて7年間、スキンケア・メイクアップ・ヘアケア商品の企画開発に従事。市場・競合調査からコンセプト立案、容器・パッケージ資材の仕様選定及びデザイン立案、発注業務、販促支援まで一貫して担当。お客様目線と戦略的な視点を掛け合わせた商品づくりに努め、敏感肌・エイジングケア・機能性コスメなど幅広いカテゴリーに対応可能。
【監修】
小平 麻貴
【役職/専門領域】
商品開発部 部長
化粧品製造業・化粧品製造販売業 総括製造販売責任者