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化粧品成分表示の見方と容器・処方の科学

成分表示の正しい読み方、ビタミンCなどの安定性、容器や処方の違いまで。化粧品開発の裏側を専門家が解説します。

化粧品の裏面にずらりと並ぶ「成分表示」。
なんとなく眺めているけれど、「どれが効果的な成分なのか」「何を基準に選べばいいのか」が分からないという声は多い。
実は、この“文字の羅列”こそが、製品の品質・設計思想・安全性を語る最重要データです。

本記事では、成分表示の正しい見方、光に弱いビタミンCを守る容器の役割、
そして“同じ成分でも違う化粧品になる理由”までを、開発現場の視点から解説します。
読むだけで、あなたの「成分の見え方」が変わるはずです。

この記事でわかること
・化粧品の成分表示を正しく読むための基礎知識
・ビタミンCなど、光や酸素に影響される成分の安定化の仕組み
・同じ成分でも処方によって性格が変わる理由

この記事のポイント
1.成分表示は「効果順」ではなく「配合量順」
2.容器と処方は“成分を守る”もう一つの設計
3.安定性を理解すれば、ブランドの誠実さが見えてくる

成分表示の「配合順」は効果の順番ではない

多くの人が誤解しているのが「成分表示の並び=効果の順」という考え方。
実際には、成分は“配合量が多い順”に並ぶのがルールです。
たとえば、水・BG・グリセリンなどの基材が上位に来ているのは当然のこと。
有効成分や植物エキスなどは微量配合でも十分な効果を発揮することがあります。

あるOEM開発現場では、顧客から「◯◯エキスが上の方にないのは効果が弱いのでは?」と質問を受けることがよくあります。
しかし、成分の「効果」は濃度よりも安定性と相溶性(他成分とのなじみ)によって左右されます。
つまり、配合順だけで製品の価値を判断するのは早計です。

とはいえ、成分表示には確かな“傾向”もあります。
上位に多い保湿成分や溶剤の種類から、「どんな肌質に向いているか」「どんなテクスチャーか」のヒントを読み取ることができるのです。

ビタミンCは光に弱い?容器が果たす“防衛設計”の話

ビタミンC(アスコルビン酸)は酸化に非常に敏感な成分。
光や空気に触れることで分解しやすく、時間とともに変色・臭いが出ることもあります。
そのため、化粧品では「ビタミンC誘導体」と呼ばれる安定型の成分を使用するのが一般的です。

実際、ある開発チームでは透明ボトルで試作した際、数週間で黄色く変色。
遮光ボトルに変えた途端、安定期間が2倍以上延びたというケースもあります。
これは、容器が「化学的な盾」として機能している典型例です。

とはいえ、遮光性だけで完結するわけではありません。
配合する油分やpHのバランス、界面活性剤の選び方もビタミンCの安定性に影響します。
つまり、「容器」と「処方」は表裏一体。見た目のデザインではなく、中身を守るための設計なのです。

同じ成分でも違う?化粧品が“性格”を持つ理由

「このクリームとあのクリーム、成分表がほとんど同じなのに使い心地が違う」
──これはよくある疑問です。
答えは、“処方”という目に見えない設計思想にあります。

たとえば、同じヒアルロン酸でも「分子量」が異なると肌への浸透スピードや保湿感が変わります。
さらに、乳化方法(W/O=水中油型か、O/W=油中水型か)によってテクスチャーがまったく違ってくるのです。

あるOEMでは、同一成分でも「サラッと感重視の処方」「しっとり長持ち型の処方」を作り分けています。
同じ素材でも、ブランドが伝えたい“性格”によって設計が変わるのです。
だからこそ、成分名だけで判断せず、処方の背景まで知ることが本当の理解といえます。

注目成分―エルゴチオネインとカオリンの特徴

抗酸化の注目株「エルゴチオネイン」

近年、アンチエイジング領域で注目されている成分がエルゴチオネイン。
アミノ酸由来で、細胞内の酸化ストレスを防ぐ働きを持ちます。
ただし、熱や金属イオンに弱いため、製造工程での温度管理や金属触媒対策が必要。
ある開発者は、「加温工程を1度でも誤ると効能が失われる」と語っています。
この慎重な設計こそが“高機能成分を活かす処方力”です。

吸着と滑らかさを両立する「カオリン」

一方、クレイ系のカオリンは泥パックなどでよく使われる吸着成分。
皮脂を吸着しつつ、ミネラル由来のなめらかさを残すために、粒径(粒の大きさ)と分散性の管理が重要です。
粗すぎるとゴワつき、細かすぎると吸着力が落ちる――この“さじ加減”が技術者の腕の見せどころ。
実際、粒径分布を微調整することで「洗い流した後もしっとり感が続く泥パック」が生まれています。

成分理解は「ブランド信頼」を支える力になる

成分表示を読む力は、単なる知識ではなく「信頼を見抜く力」です。
配合順・容器・処方のどれを見ても、そこにはブランドの哲学と誠実さが表れています。

OEM開発の現場でも、「どうすれば長く安心して使ってもらえるか」という視点が最も重視されています。
それを理解できる読者は、ブランド選びの基準を自分で持てる人です。

とはいえ、成分や処方の世界は奥が深く、一朝一夕で理解できるものではありません。
そんなあなたにこそ、OEM専門家への相談をおすすめします。
「ラベルの裏」にある真の価値を、次の開発で活かしていきましょう。

まとめ

・成分表示は「量の順」であり「効果の順」ではない
・容器と処方が成分の安定性を支えている
・同じ成分でも“性格”は異なる
・注目成分は特性と安定条件を知ることが鍵
・理解を深めれば、ブランドを見る目が変わる

成分の「正しい読み方」を知ることは、化粧品を“選ぶ”側にも“作る”側にも欠かせない力。
その理解こそが、ブランドの信頼を築く第一歩です。

【FAQ1】
Q:成分表示の上位にある成分が一番効くの?
A:いいえ。上位は単に“量が多い成分”であり、効果の強さとは一致しません。少量でも効果を持つ有効成分も多くあります。

【FAQ2】
Q:ビタミンC配合商品はすぐ酸化する?
A:誘導体や遮光容器などの工夫で安定化可能です。容器と処方の組み合わせで長期間品質を保てます。

【著者】
佐々木千草

【著者プロフィール】
職種:化粧品企画開発
経験年数:7年
化粧品業界にて7年間、スキンケア・メイクアップ・ヘアケア商品の企画開発に従事。市場・競合調査からコンセプト立案、容器・パッケージ資材の仕様選定及びデザイン立案、発注業務、販促支援まで一貫して担当。お客様目線と戦略的な視点を掛け合わせた商品づくりに努め、敏感肌・エイジングケア・機能性コスメなど幅広いカテゴリーに対応可能。

【監修】
小平 麻貴

【役職/専門領域】
商品開発部 部長
化粧品製造業・化粧品製造販売業 総括製造販売責任者

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